薬師寺は「法相宗(ほっそうしゅう)」の大本山です。その教えの中身は中国の唐代に出た玄奘三蔵がもたらした佛教の基礎学とされる唯識の教えです。我々の生きている世界は苦です。この苦の世界から抜け出すにはこの世界そのものを潰して変えていくか?その世界を見ても心理的に苦とは思わない世界を心理的に自分がつくるほかありません。この世界を変えていくことは現実的ですが、不可能な場合もあります。その場合、心理的に感ぜられる「苦」の観念を「楽」に変えていくだけで充分であり、逆にそれは心理的観念でなければなりません。そうしなければ、世界を変えられない場合やたとえ変えたとしても、新しい世界への欲求があらたに生まれ、問題の解決、すなわち苦の世界からの離脱は究極的に達成されません。究極的な救済、より普遍的な問題の解決は、自身が個々に持っている心理的観念の本質を転換する事によってのみ達成するのです。そういった観念の転換を行える信念の確立をめざすものが唯識の本分である。
  その意味でこの「法」という語は、物質を表し、「相」とは心理的な印象を示しています。音を聞いた時に不快感が生じたとしましょう。その音は法であり、それによって生じた不快感は相です。これら2つの項目は決して一対一対応ではありません。同じ音を聞いても快感を感じる事もあるからです。こうしたことから1つの項目から生じ得る様々な項目を考えながら、この世界を分析し分類しながら、明確な論理で考察し世界の真相を説明します。佛教学の基礎といわれているのが唯識の教えです。法相宗とはその代表選手とも言えるものです。


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