法相宗は南都六宗のひとつに数えられる、日本における現存最古の宗派です。
この宗派の教えは、5世紀ごろにインドに現れた、無著（阿僧伽）菩薩・世親（伐蘇畔度）菩薩によって大成されました。7世紀初めに玄奘三蔵が求法の旅の中で、インド・ナーランダ寺院にて教義を修め、帰国後様々な経論を翻訳しました。
弟子の慈恩大師に教義を託し、慈恩大師は法相宗を開きました。法相宗では慈恩大師を開祖、その師である玄奘三蔵を鼻祖として仰いでいます。
日本へは遣唐使の僧侶、道昭により伝来しました。
この宗の特徴は阿頼耶識［あらやしき］、末那識［まなしき］という深層意識を心の奥にあるということを認めているところにあります。その阿頼耶識を根本識［こんぽんじき］とし、一切法は阿頼耶識に蔵する種子［しゅうじ］より転変せらる（唯識所変［ゆいしきしょへん］）としています。
つまり私達の認めている世界は総て自分が作り出したものであるということで、10人の人間がいれば10の世界がある（人人唯識［にんにんゆいしき］）ということです。みんな共通の世界に住んでいると思っていますし、同じものを見ていると思っています。しかしそれは別々のものです。例えば、『手を打てば はいと答える 鳥逃げる 鯉は集まる 猿沢の池』という歌があります。旅行客が猿沢の池（奈良にある池）の旅館で手を打ったなら、旅館の人はお客が呼んでいると思い、鳥は鉄砲で撃たれたと思い、池の鯉は餌がもらえると思って集まってくる、ひとつの音でもこのように受け取り方が違ってきます。一人一人別々の世界があるということです。
それを主張するのですから複雑難解です。しかしそれをいとも巧みに論理の筋道を立てて、最も学的秩序を保った説明がなされているところに、この宗の教理の特徴があります。
玄奘三蔵（602-664）は中国・隋代に生まれ、唐代を中心に活躍しました。『西遊記』に登場する三蔵法師のモデルとなった実在の人物です。
玄奘は陳家の四人兄弟の末子で、彼が10歳のときに父が亡くなり、翌年洛陽に出て出家していた次兄のもとに引き取られ、13歳のときに出家しました。玄奘は25、6歳ころまで高僧の教えを求めて、中国各地を巡歴しました。しかし修行が深まるにつれて教えに疑念を懐くようになりました。各地の高僧はそれぞれ異なる説を立て、経典を見ても玄奘の疑問を解くには至りませんでした。そこで玄奘は、天竺（インド）で教義の原典を学ぶことを志しました。
当時、唐は鎖国政策を取っており、国の出入りを禁止していました。玄奘は嘆願書を出して出国の許可を求めますが認められませんでした。
そこで、27歳の時密出国により旅に出ます。その道のりは平坦な道ばかりではなく、灼熱のタクラマカン砂漠や極寒の天山山脈、時に盗賊に襲われるなど過酷なものでした。
3年の旅を経て天竺のナーランダ寺院にたどり着き、戒賢論師に師事して瑜伽唯識の教えを学びました。
ナーランダ寺院での修学を終え、天竺各地の仏跡を訪ね歩いた後、帰国の途につきます。過酷な道を再び陸路により戻った玄奘の旅路は3万キロを超えます。
そして17年の旅を終え、経典657部の他、仏像や仏舎利を20頭の馬の背に乗せ帰国しました。密出国した身でありながら、迎えの使者をだすなど、唐の皇帝・太宗は玄奘を大歓迎しました。
玄奘は持ち帰った仏典の翻訳に取り掛かります。皇帝からの全面的な支援を受け、全国から優秀な僧侶が集められ翻訳が進められました。19年間で地理的な記録書である『大唐西域記』と、75部1335巻の仏典を翻訳しました。
玄奘の翻訳は画期的なものであり、玄奘より前の翻訳を「旧約」、玄奘以後の翻訳を「新訳」と区別するように成りました。
玄奘三蔵の命を掛けた求法の旅により、中国そして日本の仏教は大きく発展を遂げたのです。
- 白鳳時代
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六八〇年
天武天皇 皇后（後の持統天皇）の病気平癒を祈願して、薬師寺建立を発願する。
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六八六年
天武天皇崩御。皇后であった鸕野讃良皇女
が持統天皇として即位される。 -
六八八年
無遮大会を薬師寺に設ける。
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六九八年
薬師寺講堂阿弥陀大繍仏の開眼供養を行う。
この時ほぼ講作が終り僧侶を住まわせ始める。
- 奈良時代
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七一〇年
都を平城京へ移す。
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七一八年
薬師寺を平城京六条二坊に移す。
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七一九年
造薬師寺司に史生二人を置く。
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七二二年
僧綱を薬師寺に止住させる。
天武天皇の為に弥勒像を持統天皇の為に釈迦像を作る。 -
七一七年～七二四年
吉備内親王が元明天皇の為に東院を建てる。
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七三〇年
東塔を建てる。
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～七四〇年
行基を薬師寺の師位僧（五位以上の官人と同等の上級官僧）として認める方針をとる。
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七四三年
聖武天皇、大仏建立を発願する。
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七四七年
資財帳を勘緑する。
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七四九年
行基 聖武天皇に戒を与える。その後遷化。
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七五二年
東大寺、大仏開眼供養が行われる。
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七五三年
絵師 越田安万らが黄本実将来本を写して仏足石を刻む。
- 平安時代
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七九四年
都を平安京へ移す。
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八八九年～八九八年
八幡宮を建てる。
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九七三年
食堂から出火して講堂・三面僧坊・回廊・経蔵・鐘楼・中門・南大門等を焼失する。
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九八六年
中門を造立する。
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九八九年
台風により金堂の上層が倒壊する。
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九九九年
食堂の復興を開始する。
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一〇〇五年
食堂の造営が終了する。
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一〇〇六年
南大門を立柱し、中門の二天像を造立する。
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一〇〇九年
十字廊を造立する。
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一〇一三年
南大門の造営を終る。
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一〇九五年
本薬師寺跡より仏舎利を掘出す。
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一一四〇年
大江近通が南都七大寺を巡礼し、薬師寺に詣でる。
- 鎌倉時代・室町時代
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一二八五年
東院堂を再興する。（鎌倉時代）
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一三六一年
地震により金堂・東西両塔破損。中門・回廊・西院等が倒壊する。
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一四四五年
台風により金堂・南大門が倒壊する。仮金堂上棟する。
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一五一二年
南門（旧・西院西門）を建てる。
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一五二四年
金堂・東西両塔の再興修造の勧進状を作成する。
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一五二八年
金堂・講堂・中門・西塔・僧坊等が兵火で消失する。
- 江戸時代
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一六〇〇年
仮金堂を上棟し、葺瓦する。
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一六〇三年
八幡宮を再興造営する。
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一六四四年
東塔を修復する。
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一六五〇年
西院の西門を移築して南門とする。
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一七三三年
東院堂の基壇を嵩上げし、西向に建てかえる。
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一八五二年
仮講堂が落成する。（一九九五年に撤去）
- 明治
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一八七三年
この頃、薬師寺宗派独立運動起こる。
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一八八〇年
フェロノサ、初めて薬師寺仏像の調査。
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一八八六年
六月二十三日、薬師寺法相宗に加入。
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一九〇〇年
五月、東塔修理完成。この時心柱頂部に新たに仏舎利を奉納。
- 昭和
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一九三四年
西塔跡に移された文殊堂撤去、西塔跡発掘調査。鐘楼台風により倒壊。
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一九三七年
鐘楼を金堂の東に移建。
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一九四四年
十二月八日、地震のため仮金堂、仮講堂、東塔傾斜、東大門、北大門倒壊、塔頭地蔵院大破す。
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一九四五年
農地開放により寺領五町余反を小作者に譲渡。
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一九六六年
十二月八日、収蔵庫を建立。
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一九七一年
四月三日、金堂起工式。二十二日より二週間。東京日本橋三越百貨店にて月光菩薩展を開催、金堂復興大勧進を行う。
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一九七二年
一月八日、お写経道場落慶。
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一九七五年
東京別院をお写経道場として開く。
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一九七六年
四月一日～五月八日（三十九日間）、現 金堂落慶。百万巻写経達成。三月十五日西僧坊六房復元。三月二一日梵鐘新鋳。
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一九八一年
四月一日～五日、現 西塔落慶。二百万巻写経達成。三月十五日東僧坊復元。
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一九八四年
十月八日、現 中門落慶。三百万巻写経達成。十月十一日、昭和天皇行幸。中門の初通りとなる。
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一九八六年
十月より翌年にわたり、三越百貨店十四店舗にて天武天皇千三百年玉忌記念出開帳を開催。
- 平成
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一九九一年
三月二十日～二十五日、玄奘三蔵院伽藍落慶。五百万巻写経達成。四月二十一日、中門二天王像開眼法要。
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一九九六年
三月三十日～四月五日、大講堂起工式。六百万巻写経達成。
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二〇〇〇年
大晦日に平山郁夫画伯により「大唐西城壁画」が玄奘三蔵院伽藍の壁画殿に献納される。七百万巻写経達成。
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二〇〇三年
三月二十一日～二十三日、現 大講堂落慶。大講堂にて約五〇〇年ぶりに最勝会も復興される。